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介護マネジメント塾 ..................... 経営のツボ55
早 川 浩 士
(有)ハヤカワプランニング 代表取締役
2008年 1月号
転期に立つ経営者の資質の鍛え方 24
愚公移山 (ぐこういざん)
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滾(たぎ)る熱意、弛まぬ努力
「愚公移山(愚公、山を移す)」という中国の故事がある(注)。
熱意と努力を惜しまなかった古老愚公は、ついに山を動かしたという寓話からきた言葉で、「滾る熱意と弛まぬ努力を続ければ、どのような大きな事業であろうとも、いつかは成し遂げられる」という意味がある。
昨今、愚考(愚か人の考え)、愚行(愚か人の行動)の横行闊歩が目に余る時代となって、愚公の嘆きもいかばかりかと察する。
話の粗筋は、こうである。
昔、中国・黄河下流の山麓に、北山の愚公という90歳になる古老が住んでいた。
家の前には、二つの大きな山が立ち塞がっていたので、どこへ往来するにも遠回しなければならないほど、支障を来たしていた。
「この険しい山を平らにして、道を開こう」
愚公を先頭に、一家総出による道づくりがはじめられた。
いざ、作業に取りかかったものの、子供や孫の手伝いに頼った作業では、年月が過ぎるばかり。
遅々として、進まなかった。
じっとこの様子を眺めていた、黄河の畔に住む老人がいた。
ある日、老人は嘲笑混じりに、
「愚公よ、あなたは、あまりの考え無しだ。残りの人生、あとわずか。とてもじゃないが、平らにするなどできっこない(笑)!」
と声をかけてきた。
愚公は、
「あなたの凝り固まった心では、何もできっこない。私が亡くなっても、この土地で暮らし続ける子や孫たちがいる限り、道づくりは引き継がれ、いつか必ず成し遂げられるであろう!」
と、この作業が単なる思いつきではなく、遠大な構想に立っていて、その決意は少しも揺らいでないことを熱く語りはじめた。
この二人の話を聞いていた山に住む神は、愚公が山を切り崩すことを止めないだろうと天帝(天の神)に報告。
愚公の姿に感銘した天帝は、2人の神に山を一つずつ背負って、北と南に運ぶように命じたという。
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急ぐべからず
不自由を常と思えば、不足なし
人の一生は、重荷を背負うて、遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。
不自由を常と思えば、不足なし。
心に望みおこらば、困窮したる時を思い出すべし。堪忍は無事の礎、怒りは敵と思え。
勝つことばかり知って、負くることを知らざれば、害その身に到る。己を責めて、人を責めるな。
及ばざるは、過ぎたるに優れリ。
徳川家康が、正月15日(慶長8・西暦1603年)に記した言葉である。
愚公は山、家康は重荷、それぞれが背負ったものは異なるものの、「人生で一番の重荷を自ら背負って立つ」という点では、共通すべき心の構え方を見ることができる。
新年に際し、トップの背負っているものに再点検を促したい。
滾る熱意、弛まぬ努力。
萎えてはならぬこの二つ。
然る後、組織全体の目標達成のため、@目的、A貢献、B評価の道標を、全職員に示そう。
愚考(行)に在らず。愚公たれ。
(注)『列子(湯門編)』
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